統計検定1級人文科学に合格（評価A）した。
これまでの経過を振り返る。
2019年：統計数理合格、統計応用（理工学）不合格
2022年、2023年：統計応用（人文科学）不合格
４回目の受験で６年を要したことになる。
2022年は、準１級で最優秀成績だったので、調子に乗って失敗。
2023年は、過去問５周、ノートまとめ、試験形式の練習して臨んだが惨敗。
もうダメ、自分には無理だと諦め、半年以上勉強から遠ざかった。
幸いにも地元の看護系の専攻科で講師をさせていただき、教材研究で統計を学び直した。
人に教えるというのは最良の学習のようである。
8月頃から勉強を再開、放置してあった前年の問題を解き直した。
なるほど落ちて当然だと感じた。たくさん知識を詰め込んでいたが、本当の理解に至っていなかったのである。学習開始時は意欲も乏しく、時間もないので予想問題だけやろうと考えた。
予想問題は、項目反応理論と層化抽出法である。次年度にIRTを活用した全国学力調査が予定されているからである。同じ理由で、分散分析の被験者内計画や混合計画も対策することにした。
予想は全て外れたが、学習する中で、新しいものが見えてきた。
2023年１問目のテーマは混合分布である。
現実のデータは、さまざまな集団から得られる混合分布である。層化抽出法も混合分布からの抽出だ。判別分析は混合分布での帰属の問題である。分散分析も複数の群を混合する。
別々に理解していたものが１つにつながって見えたときは感動した。
今まで別々に理解していたことが根っこでつながりだし、学習がドリルではなく発見と感動に変わった。要は、学習が面白くなり出したのである。
枝葉は多くとも根っこは一つ。数学の勉強と似ている。
木が枝を伸ばし、葉っぱから光合成で得たエネルギーを根っこに蓄えるように、学習したことを根っこに戻すよう意識した。数学でいう基礎・基本というのは、こういうことかもしれない。数学教員を４０年もしていて今頃こんなことに気づくのは恥ずかしい。教員時代は困難なことに挑戦し格闘して学ぶということが少なかったのである。
9月頃から、統計数理に合格したときと同じようなことが内部で起きはじめた。
日常生活の様々な時間の中で、学んだことを頭の中でつなげ出したのである。学んだことがつながり血が通いだすと、視点が拡大し先を見通せるようになる。すると解くことが面白くなり、正の循環が生まれる。もしかしたら、今年はいけるかもしれない。そんな思いが頭をかすめた。しかし心配もあった。「ちょうどピークが試験の時であってくれたら」という思いである。
試験は名古屋である。能登から名古屋の受験会場まで６時間、乗り換えすること5回。
昨年はノートやプリントをリュックにつめて試験に臨んだ。電車の中でも見直をして知識を詰め込もうとした。今年は電車の中でもあまり復習しなかった。いくら詰め込んだところで、使いこなせなければ意味がないからである。理解していれば思い出せる。
知識をつなげることで軽量化し、荷物も軽量化、気持ちはダメ元で開き直っていた。
試験は１問目40分、２問目20分、３問目20分。10分余ったが、記載漏れを見直して最後の5分は寝ていた。もう見直す気にはなれなかった。
統計検定の勉強から得たものは知識ではなかった。学ぶと言うことが人間にとって、どのような精神的営みであるかを学んだ。折しも、非常勤講師をしている高校から図書館報の依頼があり、大学時代に読んだ「正義と微笑」を紹介させていただいた。
「ある日、黒田先生は授業の終わりに、突然教師を辞めると宣言し、お別れの挨拶を始めた。勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。（中略）
学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。（中略）僕は先生に飛びついて泣きたかった。「礼！」級長の矢村が、半分泣き声で号令をかけた。六十人、静粛に起立して心からの礼をした。」
当時の人数が60人だったことに驚く。老母の頃もクラス50人だったという。
老母は女学校の校歌を口ずさんでいる。
袖ケ湾の彩霞 帆かけのどけき春の朝 出入りの船に勤労の 舵とる水夫に笑まいあり
のと共栄信用金庫の2025カレンダーは田鶴浜の御手洗池である。写真家の湯浅啓さんは能登の写真を撮っておいでる。今年の地震で、どんな写真になるか気になっていた。
御手洗池は赤蔵山の上り口にある。もののけ姫のシシ神池のような気配が漂う。
皆、ふるさとの再生を祈っている。
